イルミナティカードの予言 Ver153 Nevermore(二度とない)編 

大鴉』(おおがらす、The Raven)は、アメリカ合衆国の作家エドガー・アラン・ポーが1845年1月29日に発表した物語詩。

その音楽性、様式化された言葉、超自然的な雰囲気で名高い。
心乱れる主人公(語り手)の元に、人間の言葉を喋る大鴉が謎めいた訪問をし、
主人公はひたひたと狂気に陥っていく、という筋である。

学生であろうと指摘されることの多い主人公は、恋人レノーアを失って嘆き悲しんでいる。
大鴉はパラス(アテーナー)の胸像の上に止まり、
「Nevermore(二度とない)」という言葉を繰り返し、
主人公の悲嘆をさらに募らせる。詩の中のいたるところに、
ポーは伝承やさまざまな古典の隠喩を行っている。

「イブニング・ミラー」紙(en:New York Mirror)に掲載された『大鴉』のため、
ポーはまたたくまに有名になった。
『大鴉』はすぐに各紙に再掲載され、挿絵もつき、パロディも生まれた。
その価値については異議を唱える批評家もいるものの、
これまで書かれた有名な詩の1つであることに変わりはない

「大鴉」The Raven(壺齋散人訳)

あるわびしい夜更け時 わたしはひそかに瞑想していた
忘却の彼方へと去っていった くさぐさのことどもを
かくてうつらうつらと眠りかけるや 突然音が聞こえてきた
なにかを叩いているような音 我が部屋のドアを叩く音
いったい何者なのだろう 我が部屋のドアを叩くのは
それだけで 後はなにも起こらなかった

はっきりとわたしは思い出す 12月の肌寒い夜のことを
消えかかった残り火が 床にあやしい影を描いた
夜が明けるのを願いつつ 書物のページをくくっては
わたしは悲しみを忘れようと努めた レノアを失った悲しみを
類まれな美しさの少女 天使がレノアと名づけた少女
彼女は永遠に失われたのだ

紫色のカーテンの かすかな絹のさやめきが
それがわたしを脅かし 感じたことのない恐れで包んだ
震える心を静めるため わたしは立ったままつぶやき続けた
誰かが部屋の扉をたたき 中へ入ろうとしている
深夜に部屋の扉をたたき 中へ入ろうとしている
そうだ それ以上ではない

やがて気持を持ち直し ためらうことなくわたしはいった
紳士にせよ淑女にせよ 是非あなたのお許しを請いたいと
だが実は夢見心地で あなたの近づくのを感じていた
あなたは軽い足音をたて わたしの部屋の扉を叩く
あまりにかすかで聞き取れぬ音に わたしは扉を開け放った
扉の外は闇で 他にはなにも見えなかった

深い闇の中を覗き込みながら わたしはいぶかり立ち尽くした
誰もあえて見ることを 望まない夢のような気がして
沈黙は破られず 闇には何の兆候も見えない  た
だひとつ言葉が発せられた レノアとささやく言葉が
わたしが発したその言葉は 闇の中をこだまする
これだけで 後は何も起こらなかった

心を熱くたぎらせながら 部屋の中に戻っていくと
再びこつこつという音が聞こえた 今までよりも大きな音が
たしかにこれは だれかが窓格子を叩く音だ
いったい何事が起きているのか その様子を確かめてみよう
心をしばし落ち着かせて その様子を確かめてみよう

だがそれは風の音 それ以上ではなかった
わたしが格子を押し開けるや バタバタと羽をひらめかせて
大きな烏が飛び込んできた 往昔の聖なる大鴉
傲岸不遜に身を構え ひとときもおとなしくせず
紳士淑女然として 扉の上にとまったのだ
わたしの部屋の扉の上の パラスの胸像の上に
とまって座って それだけだった

この漆黒の鳥を見て わたしの悲しみは和らいだ
気品に溢れた表情が おごそかでいかめしくもあったゆえに
お前の頭は禿げてはいるが 見苦しくはないとわたしはいった
夜の浜辺からさまよい出た いかめしい古の大鴉
冥界の浜辺に書かれているという
お前の名はなんと言うのか  大鴉は応えた ネバーモア
この無様な鳥が明確にものをいうのに わたしは大変驚いた

たとえその言葉には意味がなく 何を言っているかわからぬとしても  だがこんな鳥が自分の部屋の 扉の上にいるのは素敵だ  扉の上の胸像の上に 不思議な名前の鳥がいるのは  ネバーモアという名の鳥が  大鴉がいったのはただそのひとこと 塑像の上に孤立しながら  その言葉にまるで 己の魂をこめたように  それ以上大鴉はものいわず 羽を動かすこともなかった  そこでわたしはつぶやいたのだ 以前にも同じようなことがあった  それは夜明けとともに去ってしまった 希望が去っていったように  すると大鴉はいったのだ ネバーモア  かくも時を得た答えに 沈黙が破られたのに驚き  わたしはいった 疑いもなく これがこの鳥のただひとつの言葉  それは不運な飼い主から教わった言葉 そうだその男は  過酷な運命によって これでもかこれでもかと打ちのめされ   もはや口に上る言葉といえば ただひとこと  ネバー ネバーモアのみ  それでも大鴉がこの哀れな心を 慰めてくれようとするのを見て  わたしは大鴉の目の前に 安楽椅子を引いていっては  深々とクッションにうずまりながら あれこれと想像を回らした  この大昔の不吉な鳥は 陰鬱で 無様で いやらしい   この不吉な鳥はわめきながら いったい何を言いたいのかと  ネバーモアということばで  あれこれと思い測りつつ 一言も発することのないうちに  大鴉の目の炎が わたしの心の中にまで燃え広がる  それでもわたしは考え続ける 頭を椅子の背に凭せかけながら  その椅子の背にはランプの光が ビロードの生地を照らし  そのランプの光に照らされた 椅子の背には彼女が  もう身をゆだねることはないのだ  すると空気が密度を濃くし どこからともなく匂いがただよい  香炉を振り回す天使たちの 足音が床に響く  やれやれこの天使たちは 神がわたしに差し向けたのか  この匂いはレノアへの思いを 和らげるための妙薬の匂いか  この妙薬を飲み干せば 辛い思いが忘れられるのか  大鴉が答えた ネバーモア  邪悪な預言者よ 鳥であれ悪魔であれ  誘惑者であれ 難破した漂流者であれ  孤高で不屈なものよ どうか言ってくれ  この呪われた砂漠のような地に 幽霊たちの住処のような家に   果たしてギレアドの香木が 存在するかどうか言ってくれ  大鴉は答えた ネバーモア  邪悪な預言者よ 鳥であれ悪魔であれ  あの聖なる天蓋にかけて 父なる神の名にかけて  この悲しみに打ち沈んだ魂にいってくれ はるかなエデンの園のうちで  天使がレノアと呼んだ娘を 果たして見ることがあろうかと  かの類いまれな美しき少女 天使がレノアと呼んだ娘を  大鴉は答えた ネバーモア  もうたくさんだ わが仇敵よ わたしは飛び上がって叫んだ  去れ 嵐の中へ または暗黒の冥界の海辺へ  形を残さずに消えろ お前の言葉の余韻も残さず  わたしを孤独の中に放っておけ その場から消えていなくなれ  わたしのこころを静かなままにして その場から消えていなくなれ  大鴉は答えた ネバーモア  すると大鴉は飛び回ることなく じっと動かずにうずくまったまま  扉の上の塑像の上に 乗ったままの姿勢を保ち  目はうっとりと閉じられて 夢を見る悪魔のよう  ランプの光に照らされて 身は床の上に影を落とし  わたしはその影の中から 抜け出そうとするが  もはや抜け出すこともままならないのだ